「Q-10
signature」はDH Labs社が自信に満ちてリリースした、
同社の代表格ともいえるスピーカーケーブルです。
D. Hovsepianを中心とした開発スタッフは並々ならぬ情熱をもって
このQ-10
signatureに取り組み、
結果的にあらゆる音響的課題が解決されてしまったかのような
完成度の高さを見せる製品になっているのです。
(私事ですが、当方自身は数年前この「Q-10 signature」によってDH Labs社と出会い、以後リファレンスとして使用し続けた経緯があったのでした。)
「Q-10
signature」がどのようにしてこれ程魅力ある音質を獲得したのかということに興味が尽きません。
開発スタッフはまず導体の純度向上から取り組みました。
「Q-10
signature」に投入されたクリスタル銅は極めて高純度なもので、
100万分の7以下の酸素しか含まれないとのこと。
(我々日本人の好きないい方では7Nの桁数です)
厳しい公差基準に従い表面を精密に磨き上げられたピュアクリスタル銅は、
2本の12G導体と2本の14G導体の組み合わせ(結果的に10G同等)という
ユニークな4導体螺旋配列を採って強力にEMIノイズを制御します。
DHラボがこだわりを見せる誘電体に、
ここでは極めて純良なPTFE(テフロン)の押し出し材を採用して、
伝送中の誘電損失、変質などから音楽信号を防護。
更に収縮力の強いマイラー、そしてきつく編み上げられたジャケットによって
強化された厚く高密度のアウターなどが、
徹底的なレゾナンス最適化を実現しているのです。
これら設計上のこだわりと工夫はQ-10 signatureの再生音に見事に反映します。
このケーブルを使うや、潜んでいたノイズ、混濁、滲み、雑味などがすっきりと取り払われ、
音響上まれに見るピュリティーを獲得します。
地に伝わる重低音から繊細極まりない超高音域にいたるまでのワイドレンジは
リスナーの耳に直ぐに確認されるところですが、
とりわけお伝えしたいことはQ-10 signatureならではのリアルな音像です。
中心となる直接音が今迄とまったく異なる豊かな実在感を帯び始め、
2次元的存在であったアーティストが3次元的に立ち上がり、
聴き手の方に進み出て、じつに表情豊かに歌い始めるのです。
このことを体感した方は「Q-10
signature」をスピーカーから外すことが出来なくなるのではないでしょうか。
これこそ音響再生における位相の重要性を探求した同社の研究成果なのです。
中音域と高音域をどっしりと支える深い低音の力量によって、
エネルギーバランスは安定感があってたいへん心地よいものです。
間違いなくリスナーに充足を与え、リスニングを楽しくすることでしょう。
とかく重箱の隅をつつくような聴き方をしがちな我々オーディオファイルも、
いつしか聴いている音楽そのものの豊かな世界に引き込まれ、
ときを忘れていくのです。